アイルランド伝統音楽で使われている楽器について

 アイリッシュ伝統音楽で使われる楽器は、フィドルやギターの様に比較的入手しやすいものもありますが、ボタンアコーディオンとかコンサーティーナ、イーリアンパイプスの様に、やってみたくても、お店で実際に目にすることが少なく、どういうタイプのものをどうやって入手したらいいのか途方に暮れてしまうことの方が多いです。楽器選びや楽器購入に役立ちそうなリンクを集めてみました。

【ホイッスル/アイリッシュフルート】

  笛系の楽器は門外漢なので良くわかりませんが、初心者の方なら実際にホイッスルやフルートを演奏したり、教えたりしている人から話を良く聞いてから購入するのが良いと思います。私は豊田さんにお世話になりました。通信販売では、実際に購入したことはないのですが、hataoさんのケルトの笛屋さんに初心者にも解りやすい説明があるので選び易いのではないかと思います。またケルトの笛屋さんのホームページには全国のレッスン情報も掲載されています。

【フィドル】

  アイリッシュ音楽でフィドルと呼ばれている楽器はクラッシック音楽で使われているバイオリンと同じものなので(セッションでチューニングが素早くできるように2-4弦にもファインチューナーがついているのが違うだけ)、これまで長年クラシック音楽をやられていた方は多分良い楽器をお持ちでしょうから、楽器を新たに買い直す必要はありません。これから初めてフィドルを買うという人はアイリッシュフィドルが上手に弾ける人と一緒に楽器屋さんに行って予算内の楽器を片っ端から弾いてもらって、自分の気に入った音色のフィドルを手に入れましょう。誰が作ったかとか制作年はいつかとかは気にせず、好きな音色のフィドルで練習するのが上達の早道です。

 参考リンク  アイルランド音楽館 : フィドル、バンジョー、ホイッスル奏者のTakaさんが作成しているアイリッシュ音楽の総合情報ページです。フィドルの購入法、演奏スタイル、練習方法、おすすめCD,フィドル奏者についての情報等盛りだくさんの内容となっています。またTakaさんはCCEが資格を認定した公認講師でアイリッシュフィドルやバンジョー/マンドリン、ホイッスルのレッスンもやられています。

【バンジョー】

  アイリッシュ音楽で一般的に使われるバンジョーはブルーグラスやオールドタイムで使われる5絃バンジョーではなく4弦のテナーバンジョーです。デキシーランドジャズなどで使われるテナーバンジョーは低い弦からCGDAと調弦されますが、アイリッシュのテナーバンジョーはフィドルやマンドリンより1オクターブ低いGDAEと調弦されます。プロの演奏家は音色を重視して19フレットでリゾネータ―のついたものを使う人が多いですが、指を相当ストレッチしないといけないのと重量が重くなるので、17フレットでリゾネータ―のついていないオープンバックのものを使う人もいます。こちらは運指が楽で軽くて持ち運びに便利ですが、絃を良く選ばないと低音が出ないとか、音が前に出ないというデメリットもあるので、どちらにするかは人それぞれの好みや何を重視するかによります。

 参考リンク : アイルランド音楽館 バンジョー編  Takaさんの作成しているホームページにバンジョーの購入法、演奏方法、おすすめCD, バンジョーレッスンの紹介等が記載されています。

【ボタンアコーディオン】

1.ダイアトニックボタンアコ全般についての入門ホームページ

  横浜のGreen Sheepで毎月第3土曜日にイングリッシュ・アイリッシュのセッションを主催している小泉真樹さんのホームページです。小泉さんはアイリッシュだけでなくイングリッシュの方も得意なのでD/Gのメロディオン(イギリスではダイアトニックのアコーディオンのことを列数に関わらずメロディオンと呼びます。アイルランドでは1列のダイアトニックアコーディオンのことをメロディオンと呼んでいます)を弾いていらっしゃいますが、ダイアトニックアコーディオン全般について詳しい知識をお持ちです。Green Sheep のセッションは蛇腹率が高いので、参加するといろいろ有益な情報が得られると思います。
 melodeon.net 
 ダイアトニックアコーディオン全般についてのフォーラム

2.Keyについて

 アイリッシュをやる場合にはKeyをB/CにするのかC#/Dにするのかが悩みどころです。教則本やDVDは圧倒的にB/Cが多いです。というかC#/Dのものはほとんどありません。アイルランドに行っても一般の普通の人は大抵B/Cです。ただ将来ダンスの伴奏で1列のメロディオンもやりたいと思っているのならC#/Dは上の段の配列がDのメロディオンと同じなので有利です。また有名なプロの人にC#/Dを使っている人が多いです(例えば、Jackie Daly, Mairtin O’Connor、Sharon Shannon、Conor Keane等)。B/Cで有名なのはPaddy O’Brien, Joe Burke, John Williams, Josephine Marsh,Damien Mulane等かな。 下記のサイトで自分の好きなプレイヤーがどちらのキーのアコを弾いているのか調べて、自分の好きなプレイヤーと同じにするというのも良いかもしれません。 Will Zarwell's Irish Accordion Discography


3.メーカーについて

どのメーカーのどのモデルにするかどのメーカーのどのモデルにするかは楽しい悩みどころですね。 代表的なアコメーカーとしては、Hohner、Saltarelle、Castagnari, Paolo Soprani等があります。私が弾いたたことのある代表的なアイリシュで良く使われるモデルについて簡単に感想を述べます。

(1)Hohner/Double Ray Black Dot 


初心者用モデルで、価格と性能のバランスが極めて良いですが、新品は中国製でキーボードがプラスチック製になっており、ボタンが奥に入り込んで出てこなくなったり、といったやや粗雑な作りになっています。買うならばドイツで作られた中古品を信頼のあるリペアラーが直したものを買った方が良いです。プロ奏者ではJosephine Marsh、Martin Quinn等が使用しています。Martin Quinnさんは楽器の修理・販売もやっていて、注文すれば、彼が使用しているのと同じ改良したHohnerのDouble Ray Black Dotを比較的安い値段で作ってくれます。

(2)Saltarelle/Irish Bouebe  


飾り気のないシンプルなモデルですが、アイリッシュプレイヤーに人気のあるモデルです。Castagnari に比べると作りはやや雑ですが、気になるほどではありません。John Williamsが教則DVDで弾いているモデルです。Pat O’Connorと一緒に来日したEoghan O’Sullivan はこれのC#/Dを使っていました。 Hohner のDouble Ray Black Dotより若干重量は重くなりますが、箱が大きい分とても良い音がします。

(3) Castagnari /Tomy/Din II/The Shannon  

                                    左がTommy 右がDinnII

TomyはSharon Shannonが使っているということで有名になったモデルです。とても小さくて軽いのですがリードが3枚(MML)入っていて低音のリードを加えるか否かによって音色を変化させることができます。キーボードのメカニズムが木でできていて上の列と下の列に段差のあるステップキーボードになっています。アイリッシュのプレイヤーに指のスライドがやりにくいとこれを嫌う人がいますが、慣れれば大丈夫だと思います。Din IIはフラットキーボードでアイリッシュ用に作られたものですがキーボードのメカニズムが金属性になっていますのでリードが2枚にも関わらずTomy より大きく重くなっています。 Din IIIという3枚リードのモデルもありますが、それはもっと大きく重くなります。最近The ShanonというSharon Shannonの名前を冠したTommy のフラットキーボードバージョンも販売されているようです。

  (4) Paolo Soprani  


Irelandに行くと一番多く見かけるのがPaolo Sopraniです。昔から家にあるのでそれを使っているということなのでしょうが、音色はいかにもアイリッシュという感じです。4枚リード(MMML)または3枚リード(MML)で音が切り替えられるもの、3枚リード(MMM)で音が切り替えられないものなど、色んなタイプのものが出回っています。中でも50年代から60年代にかけて作られたグレイ色をしたPaolo Sopraniが根強い人気があり、プロ奏者ではJoe Cooley, Seamus Begley, Tony MacMahon, Danny O’Mahony, Colm Gannon, Johnny MaCathy, Kevin Keegan, Andrew MacNamara, Christy MacNamara, Billy McComiskey, Martin Mullhaire等が使っています。昔のプレイヤーは相当ウエットにチューニングしていましたが、最近のプレイヤーはややドライにチューニングすることが多いようです。非常に良い音がしますが、重量が5Kg近くあり、運搬には苦労します。 グレイパウロを入手するのは困難ですが、レプリカがJubillieモデルとしてPaolo Soprani 社から再発され人気になっています。また更に最近ではアコーディオン奏者のColm GannonがイタリアのManfrini Accordionと共同で開発した"Bosca Ceoil" というモデルが人気となっていて、Colm Gannonの他、Bryan O'Leary, Johny og Conolly等が愛用しています。

(5)Bertrand Gaillard


きれいな音色のアコーディオンで、Damian MulaneやConor Keane、この間ソーラスのメンバーとして来日したJohnny B.Conolly等が使っています。フランス製だけあってミュゼットぽいワルツなんかを弾かれるとゾクゾクする音色です。値段は他のアコーディオンとそう違わないのですが、納期は3年待ちだそうです。

4.ボタンアコーディオン関連WEBショップ

The Button Box 
 北米にあるアコーディオン・コンサーティーナの販売・修理Webshop
Lisheen Accordions 
  アコーディオン奏者のMartin Quinnが運営するアコーディオンの販売・修理サイト
Irish Dancemaster Accordions
  フロリダ在住の臼井さんが運営するアコーディオンの販売・修理サイト


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